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道を歩いていて、マンホールにころげ落ちそうになり、冷や汗をかいたことは無かっただろうか?もう4、5年前になるが、韓国のソウルでは、突然、白昼にきらびやかな百貨店が崩壊したり、漢江にかかる橋が崩落して数百人が死んだことがあった。
人生の道端にはヒョイと覗けば、真っ暗な亀裂が口を開けていることがあるものだ。その暗闇は、本来は人知をこえる不条理であるはずだ。しかし最近、日本の各所で口を開けているのは、腐乱した無限の欲望と驕りたかぶり感官を失ってしまった権力と、それらと癒着した犯罪が作り出す人工の暗闇である。
若者すらも安易と怠惰の中で、異議申し立てと社会更新の機能を失い、悪意・欺瞞・傲慢・暗愚の横行に与している。だからこそ、辻出君の、初々しい正義感と感受性、そして旺盛な好奇心と冒険精神はますます輝くのである。
その花のような若さと能力を忘れまい。この悲しみと怒りを風化させまい。何よりも暗闇を暴き、彼女を光明天地にすっくりと立たせるために努力を惜しむまい。
【プロフィール】
(徐 勝:そ・すん)1945年、京都府生まれ。韓国・国立ソウル大学校大学院に留学中の1971年、軍情報機関に逮捕され、政治犯として19年間を獄中で過ごす。1990年釈放。米国・カリフォルニア大学バークリー校客員研究員などを経て、1998年から立命館大学法学部教授。比較人権法専攻。著書に「獄中十九年」(岩波新書)、「第一歩をふみだすとき」(日本評論社)など。訳書に「ナヌムの家のハルモニたち」(人文書院)など。 |
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